2025年10月4日
『佐久間良子《音と言葉で紡ぐ 心の四季》 西本智実 芸術監督・指揮』
芦屋ルナホール
芦屋ルナホールにて開催された本公演は、谷崎潤一郎「細雪」から着想を得た、四季と時代の移ろいを感じさせる世界観の中で、音楽と言葉がひとつに溶け合うコンサートとなりました。
舞台は春・夏・秋・冬の四章で構成され、イルミナート バロックアンサンブルによる東西文化を越えた音色に、琴やソプラノの演奏が重なり、季節ごとの情景や感情が丁寧に描かれていきます。
音楽が進むにつれ、会場全体が静かに物語の世界へと引き込まれていくようでした。
舞台の壁面には芦屋の風景写真が映し出され、演奏会でありながら、終演後には「一編の映画を見終えたような余韻」を感じたという声も多く聞かれました。
音と言葉、そして映像が重なり合い、それぞれの心の中に異なる物語が浮かんでいたのではないかと思います。
そしてエピローグでは、マスカーニ作曲のオペラ《カヴァレリア・ルスティカーナ》間奏曲に合わせて、佐久間良子さんが相田みつをさんの詩「こんな顔で〜山田寺の仏頭によせて〜」を朗読。佐久間さんの気品あふれる着物姿も印象的で、客席からは思わずため息がもれるほど、舞台全体に静かな華を添えていました。
“心の四季”というタイトルのとおり、鑑賞後もなお、聴く人それぞれの心の中に、そっと風景を残してくれる舞台だったように感じます。
公演終了後には、開場時に降っていた秋雨もすっかり上がり、会場前を流れる芦屋川を眺めながら駅へと向かいました。
しっとりとした空気の中に、芦屋の風情が感じられ、演奏会で描かれた四季の情景が、現実の風景と静かに重なっていくよう… 秋の気配を肌で感じながら、帰路につきました。
(IPC:渡邉淳子)